フランチャイズの比較

建築というよりも、むきだしになったかたちそのものが訴えかけてくる。 部屋に足を踏み入れると、一転して大きな空間に包み込まれる。
いわゆる玄関という中間領域がないので、内部と外部が瞬間的に切り換わるのだ。 天井高は3.6メートルだが、スキップ・フロアで空間をつなぎ、間仕切りなしに下から上まで連続しているせいか、それ以上の広がりが感じられた。
狭小住宅とは思えないスケール。 実際、寝室に吊り下げられた洋服を見ていると、そのままブティックになってもおかしくない。
あるいは、大きな白い壁と十分な高さゆえに、現代美術のギャラリーにも使えそうだ。 壁に埋め込まれた本棚や階段は、ミニマル・アートのようにも見える。
おそらく、WHは住宅専用であることよりも、空間の形式を提案しているから、こうした読み替えを誘発するのだろう。 見方を変えれば、大きな階段室のような空間が、たまたま住宅になったといえるかもしれない。

1階は入ってすぐの食堂から奥の浴室まで、すべて土間である。 切り込みが入っていることで、斜め/斜めに奥行きが展開する効果も興味深い。
考えてみると、スキップ・フロアが上と下を同時に見せるように、斜めの構成は右と左、あるいは外と内の風景を両方感じさせるだろう。 この建築の抽象性は、プランにもあらわれている。
180度回転しても同じかたちなのだ。 つまり、点対称である。
しかも、前述したように室内の写真をひっくり返せる。 いや、それだけではない。
全体の構成を改めて見なおすと、仮に建物をまるごとひっくり返しても、基本的な構成がほぼ維持できる抽象的なフォルムなのだ。 とすれば、白黒のエッシャー階段のような表現は、反転の可能性を暗示していたのである。
子供部屋の北側の壁に小さな窓があり、見学したときは不要なのではないかと思ったのだが、1階の扉と点対称の位置なのだ。 考えすぎかもしれないけど。

Iの家を訪問したのは、家族と住宅の関係性が面白そうだと思ったからである。 改札で待ち合わせ、駅前からすぐに続く閑静な住宅街を歩くと、建築家が手がけたとおぼしき家がちらほら。
数分ほどで、Iの家に到着。 エントランスのインターホン越しに、Y下保博が挨拶する。
2階の玄関から息子夫妻が出てきたのだが、テラスにあらわれ、ブリッジを渡って、スキップテラスに移動、折り返して地上まで階段を降りた。

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